空き家率の低い東京都ですが、それでも平成30年に発表された総務省のデータ(平成30年住宅・土地統計調査 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html )によりますと807,000戸も存在するようです。
空き家放置が問題なのは、不審者の不法な侵入を許したり、放火の危険があったり、ゴミ屋敷化し不衛生で周囲の生活環境に悪い影響を与えたり、屋根が剥がれ、壁が崩れるなど倒壊の危険があったりするためです。
空き家対策特別措置法
空き家問題対策として、平成27年5月26日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が完全施行されています。
この法律では、地域住民の生命身体財産を保護しつつ生活環境の保全を図り、さらには空家等の活用を促進することが期待されています(空家対策特別措置法第1条)。
この空家対策特別措置法に基づく調査により適正管理がなされていないと判断されると、所有者は市町村から助言、指導、勧告といった行政指導を受けることになります。
また、調査の結果、倒壊の危険が著しく高かったり、著しく不衛生な状態に陥っている場合は「特定空家等」に指定されてしまいます。
ここに「空家等」とは「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)」と定義され(空家対策特別措置法第2条1項)、その「空家等」の中でも「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」が「特定空家等」と定義されています(同条2項)。
この「特定空家等」に指定された後に市町村から勧告を受けると、勧告された状況が改善されるまで固定資産税の優遇措置が受けられなくなってしまいます。
さらに、勧告を受けても状況が改善されない場合は、猶予期限を設けた命令が下されることになり、命令違反となれば刑事罰(50万円以下の罰金)を受けることになります。
また、猶予期限内に状況が改善されない場合は、行政代執行法に基づき市町村により状況改善作業(解体等)が行われ、その作業にかかった費用の請求を受けることになります。
空き家所有者のリスク
空き家から遠く離れたところに居住していたとしても空き家の所有者である限り、空き家を所有していることに伴う責任から逃れることはできません。
空家対策特別措置法に基づく税務上、刑事上のペナルティは上記のとおりですが、それだけではなく、民事上責任を負うリスクもあります。
例えば、空き家の屋根が剥がれ通行人に怪我を負わせてしまったら、土地の工作物等の所有者の責任について定めた民法第717条に基づき、空き家の所有者は被害者から損害賠償を受ける可能性があります。
これが死亡事故ともなれば、税務上の不利益や、罰金の金額とは桁が異なる賠償責任を負わなければなりません。
不必要なリスクは抱えるべきではなく、市町村から行政指導を受けたような場合は、もし不必要な空き家なのであれば、空き家を売却するなど何らか抜本的な処置を施した方がよろしいかと思います。
空き家問題への法的な対応
空き家として放置されてしまう原因としてはいくつかあり、その原因に応じ適切な法的措置をとっていく必要があります。
当事務所では、例えば、空き家を事実上管理する相続人の1人から、昨今予想を超える規模の台風など猛威を振るう自然災害が起こっていることから空き家の倒壊が心配になったという理由で相談を受けることがあります。
原因としては、遺産分割協議が整わず空き家として放置されてしまっている場合や、遺産分割協議の結果、売却のため空き家を共有することにしたものの売却に協力的でない共有者がいて放置されてしまっている場合があります。
このようなケースでは、相続手続を法的にきっちり終わらせることへのサポートや、遺産分割協議が一応は済んでいる場合は共有物の分割を他の共有者に求めることへのサポートを行っています。
これに対し、負の遺産が多く相続人全員が相続放棄するようなケースでは、相続財産管理人を選任する必要もあることからその申し立てのサポートを行います。
以上のように相続に伴い空き家化してしまうケースの他にも、例えば、所有者が認知症となり空き家の管理や処分が難しいケースもあるかと思います。
このようなケースでは成年後見人を選任する必要があることから、ご親族からの依頼をうけ成年後見人選任申し立てのサポートを行います。
また、空き家に不法占有者がいるようなケースでは、その不法占有者を空き家から追い出す必要があることから、当該不法占有者に対する建物明渡請求のサポートを行います。
このように空き家として放置されてしまう原因の中には法的に解決できることも多々あることから、空き家の取り扱いに悩み行き詰まっている場合は、一度ご相談ください。
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